「カードローンは年収の3分の1までしか借りられない」と聞いたことはありませんか。これを総量規制(そうりょうきせい)といいます。
私は20代の頃、消費者金融の店長として「貸す側」にいました。実は私が現役だった1990年代の終わりには、この総量規制はまだ存在しませんでした。規制がなかった時代を知る人間として、「なぜこのルールができたのか」も含めて、できるだけわかりやすくお伝えします。
総量規制とは?「年収の3分の1まで」のルール
総量規制とは、貸金業者からの借入総額が、原則として年収の3分の1を超えてはいけないという法律上のルールです(貸金業法に基づき、2010年6月に完全施行されました)。
たとえば年収300万円の人なら、借入の合計は100万円が上限の目安になります。すでに他社で借りている分も合算して判断されます。

なぜできた?――多重債務という社会問題
このルールができた背景には、「返しきれないほど借りてしまう人」(多重債務者)が社会問題になったことがあります。
正直にお話しすると、私が現役だった規制前の時代は、何社からでも借りられてしまう状況でした。一人の方が次々に複数の会社から借り、雪だるま式に膨らんでいく――そうした現実を、現場で目の当たりにしてきました。総量規制は、そういった悲劇を防ぐために生まれた、借りる人を守るための仕組みなのです。
総量規制の「対象外」になるもの
実は、すべての借入が総量規制の対象になるわけではありません。まず次の2つは、そもそも別の法律で管理されるため、総量規制の枠の外です。
- 銀行のカードローン(銀行は「銀行法」が適用されるため対象外。ただし各行が自主的に融資額を抑えています)
- クレジットカードのショッピング枠(買い物の分割払い。これは「割賦販売法」という別の法律で管理されます)
つまり「年収の3分の1まで」が効くのは、消費者金融やクレジットカードのキャッシングなど“貸金業者からの借入”です。
そして、この“貸金業者からの借入”の中にも、特別に扱われるものがあります。それが次に説明する「除外貸付」と「例外貸付」です。名前が似ていますが、意味はまったく違うので、ここで整理しておきましょう。
「除外貸付」とは?――そもそも計算に入らないお金
除外貸付(じょがいかしつけ)とは、総量規制の「年収の3分の1」の計算に、そもそも含めない借入のことです。金額が大きく、生活に欠かせない性質のお金なので、「総量規制になじまない」として枠の外に置かれています。
- 住宅ローン(マイホームの購入・建築のための資金)
- 自動車ローン(その自動車を担保にして購入する場合のローン)
- 高額療養費の貸付
- 有価証券や不動産を担保にした貸付(一定の条件を満たすもの)
- 売却予定の不動産の購入・改良資金 など
ポイントは、これらは借りていても「年収の3分の1」の枠を使わないということ。たとえば住宅ローンを組んでいても、その金額は総量規制の借入額にはカウントされません。
「例外貸付」とは?――1/3を超えても認められるお金
いっぽう例外貸付(れいがいかしつけ)とは、年収の3分の1を超えていても、“例外的に”借りられるケースのことです。「その人の利益を守るうえで支障がない」と認められる場合に限って認められます。
- おまとめローン(借換え)……複数の借金を1本にまとめ、金利や毎月の返済が下がるなど、利用者にとって一方的に有利になる借り換え。今より状況が良くなるので、1/3を超えていても認められます
- 個人事業主への事業資金……事業計画書・収支計画書などで、返済能力がきちんと確認できる場合
- 配偶者貸付……夫婦の収入を合算した、その3分の1まで。収入のない専業主婦(夫)の方が、配偶者の同意を得て利用できる仕組みです
- 緊急の医療費や、社会通念上やむを得ないと認められる費用
① おまとめローン――今より楽になるなら認められる
複数の会社からの借金を1つにまとめ直す借り換えが「おまとめローン」です。金利が下がる・毎月の返済額が減る・管理が1本で楽になるなど、利用者に一方的に有利になるため、年収の3分の1を超えていても認められます。
ただし注意も。おまとめは「新たにお金が増える」ものではありません。借金を整理するための仕組みなので、まとめた後にまた別のところで借りてしまうと、元の木阿弥です。元店長として言えるのは、まとめること自体が目的ではなく、そこから生活を立て直すことが本当のゴールだということ。借金の総額が減るわけではない、という点は忘れないでください。
② 配偶者貸付――収入のない専業主婦(夫)でも
本人に収入がなくても、配偶者(夫または妻)の収入と合算して、その3分の1まで借りられるのが「配偶者貸付」です。収入のない専業主婦(夫)の方が利用できる仕組みです。
利用には、配偶者の同意書、婚姻関係を証明する書類(住民票や戸籍抄本など)、配偶者の収入証明などが必要になります。手続きがやや手間で、対応していない貸金業者も少なくありません。また配偶者の同意が前提なので、「家族に内緒で」というわけにはいかない点も知っておきましょう。
③ 個人事業主への事業資金――返済能力が確認できれば
個人事業主の方が「事業のための資金」を借りる場合、事業計画書や収支計画書などで返済能力がきちんと確認できれば、年収の3分の1を超えても認められることがあります。
あくまで対象は事業資金で、生活費のための借入とは扱いが異なります。確定申告書など、事業の実態と返済能力を示す書類が必要です。事業を続けるための前向きな資金、という位置づけです。
まとめると――「除外」は最初から計算に入らないお金、「例外」は1/3を超えても特別に認められるお金。この違いを知っておくと、「自分は借りられないのでは」と早合点せずにすみます。困ったときは、選択肢があることを思い出してください。
収入を証明する書類が必要なケース
申込みのとき、次の場合は収入証明書類(源泉徴収票・確定申告書・給与明細など)の提出を求められます。
- 1社からの借入が50万円を超える場合
- 他社と合わせた借入総額が100万円を超える場合
【元店長の本音】規制は、あなたを守る味方です
貸す側にいた人間として、正直に言います。総量規制があってよかったと、私は思っています。
規制のなかった時代、借りられること自体が、かえってその人を苦しめる結果になるのを何度も見てきました。「年収の3分の1まで」という線引きは、窮屈に感じるかもしれませんが、あなたが返せなくなる前に立ち止まらせてくれる、味方のルールなのです。
そして――もしお金が必要なときは、いきなり借りる前に、まずは家族や信頼できる人に相談すること。これがいちばんだと、私はいつも思っています。
※本記事は、筆者が過去に貸金業の実務に従事した経験と公開情報(金融庁・日本貸金業協会など)をもとにした個人の見解です。現在は貸金業を営んでおりません。制度の詳細や最新の取り扱いは各社・公的機関の情報をご確認ください。



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